「会社を辞めたい」と思ったことが一度だけあります。入社4年目に新規顧客を開拓するチームに配属されたときです。毎日、デパートの特設コーナーに立ち、通りかかった方に商品をおすすめしていました。最初の3カ月はさんざんの販売成績で、「自分には向いてないのかな」と悩んでいたとき、ある先輩から「あなた、商品を売ろうとしているでしょう」と言われました。

初めはその意味が理解できなくて戸惑いましたが、入社当時に学んだことを思い出しました。私たちの使命は、商品をただ売るのでなく、お客様自身も気づいていない美しさを引き出す、ということです。その日から「この女性にもっと美しくなってもらいたい」と真剣に考えてお客様に接するようになりました。その気持ちでお客様に声を掛けると、これまで悩んでいたことがうそのようにお客様からの反応がありました。

通勤中も、女性を観察しては「この人がもっと美しくなるには……」と考えるようになり、1年半ほどで自ずと実績は伸びていきました。

この経験から「自分の第一次評価者は常にお客さま」と考えるようになりました。一度接客すればそれで終わりではありません。その場限りでなくお客様に何度も足を運んでいただくことが重要です。どんな状況にあろうとも、この考えは貫き通しました。
(中略)

販売の基本は、まず商品を好きになること。新商品にわからない点があれば、開発部門の方に納得できるまで説明を聞く。化粧品は自分の肌で効果を確かめる。つまり、お客様のことを思い、自分が納得し体感したことをお伝え出来れば、結果は後からついてくるのです。

(関根近子、資生堂 執行役員常務、プレジデントONLINE 2014年4月23日



戻る