夏の甲子園初出場初優勝の後に待っていたのは、天と地ほどに異なる結果だった。

2013年9月に行われた秋季高校野球群馬大会で、前橋育英は太田工業に3対4で初戦敗退。13年夏の甲子園優勝校で、ドラフト1位候補の好投手・橋光成を擁す強豪は、翌年春のセンバツ出場が絶望的になった。

「もし勝っていたら、僕も選手も勘違いしていた。あの敗戦で、ようやく夏が終わった感じがした」

前橋育英を率いる荒井直樹は、初戦敗退に前を向いた。より正確に言えば、屈辱から目をそらさず、正面から受け止めた。
(中略)


 

失敗をどう受け止めるかで、人の度量は問われる。将来の糧にすることができれば、悪い結果にも意味が出てくる。
(中略)


高校野球のチームにとって、監督にのしかかる責任は重い。言いすぎてもダメ、目をつぶりすぎるのもダメ。未来ある生徒たちを成長させるには、絶妙なさじ加減が求められる。

「ネジは必ず緩むから、それを締めるのが僕の役割。でも締めすぎると、バカになって壊れる。だから、ほどよく締める。でも、だんだん緩んでくるから、キュキュっとしていく。その繰り返しが大事な気がする。『チームとして締めなきゃいけない』と会話することも必要だし、締めすぎると壊れちゃう。そういう話をすると、選手と変な距離感が生まれなくなる。ほどよい緊張感が必要で、あまり強い緊張感はよくない。監督の顔色をうかがっていては、選手はあまり力を出さないと思う。この場ではやるだろうけど、違う場所に行ったらネジが緩みっぱなしになると思う。締め方も緩め方も、ここで覚えていってほしい」

組織における指導者の責任は、極めて重い。同時に、指導者が適切に背中を押してやることで、プレーヤーは可能性を無限に膨らませることができる。

(荒井直樹、前橋育英 甲子園優勝監督、東洋経済オンライン2014年01月21日


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