しかし、実際には信頼よりも目の前のお金を求める人が多いのが最近の風潮です。

「若いときに金儲けなんか考えるのは、ロクなものにならない。金を追っかけてはいけない」と忠告してあげるわけです。金儲けを目的にしたら、多少のことならと悪いことをしてでも金を儲けたいと思ってしまうものです。これは人間の本性です。

利益よりも信頼が先であることを常に意識してきました。

信頼が得られれば、必ず利益はついてくる。君が頑張って信頼を得られれば、やがては会社の財産にもなる。だから会社は君を大事にする。これが仕事というものだ


 

信頼を得るにはどうすればいいのか。私の考えを言えば、その基本は、誠実さ言行一致。この2つに尽きます。


信頼関係を続けるには、一時的な利益に振り回されず、自分を犠牲にしてでも相手との約束を守ることが大切だということがわかります。これは一見、簡単なように聞こえるかもしれません。しかし、自分の社会的な立場が上がり、守るべきものが増えるほど、実際には難しくなるのです。

相手との信頼関係よりも、自分の都合や論理を優先しなければならなくなったとき、陥りがちなのが、「丁寧に説明すればわかってもらえる」というような考え方です。しかし、これは間違いです。いったん信頼にヒビが入ると、いくら説明しても、言い訳をすればするほど、自分が信頼を打ち壊したという“確信犯”になる。

いったん信頼にヒビが入ったら、「私はそんな人間ではありません」といくら説明しても、いくらお土産を持っていっても、あるいはお金を出しても、信頼関係はそう簡単に取り戻せるものではない


(丹羽宇一郎、元伊藤忠商事会長・前中国大使、PRESIDENT 2014年3月17日号 )



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