“Don't think, feel.”(考えるな、感じろ)
これはスタッフに向けてのシュルツさんの口癖です。

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」という、感性を磨くワークショップがあります。これは、光のない世界で、視覚以外の感覚を使い、日常生活のさまざまな内容を体験することにより、本来備わっている感覚を呼び覚ませるというもので、新しいアイデア、デザイン、コモディティを生み出すひとつの契機として、フォルクスワーゲンやBMWなどでも研修の導入実績があります。(中略)

「見えない世界」に身を置くのは恐怖です。「見えている世界」で日々を過ごすほうがどんなに安泰でしょう。しかし、あえて見えない世界へチャレンジし続ける。このことを実行してきたのがシュルツさんです。(中略)

「なぜ今の素晴らしい仕事をやめて、会社を捨て、地位と安定まで捨てて、まだホテルすらないホテル会社に勤めるのか?」
シュルツさんの決断に、ハイアットの仲間や大勢の友人はショックを受けたといいます。
(中略)

それでも、シュルツさんは苦痛を伴う道を選びました。世界で最高のブランドをつくるという夢に向かって人生の舵を切ったのです。

サービスのフィールドで、世界を目指してチャレンジするということ、あるいは未知の世界に飛び込むことは、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」と同じような感覚ではないかと思います。未知の環境に身を置き、自分の五感を頼りに奮闘しながら得られるものこそ、本当に価値があるとシュルツさんは言います。

「苦痛を伴わない旅であるならば、行き先に価値はないのです」(シュルツさん)

なぜなら、高みに登るためには、苦痛は不可欠だからです。

「苦しくても毎日あなたが行うことがすべてエクセレントであるとき、あなたは成功を経験しています。自分が暗闇の中にいて、光が見えないとき、報われない可能性を気に病む必要はありません。あなたの日々のエクセレンスはそれ自体が報いであり、ほかの恩恵は後からついてきます」

そこに辿り着くまでの苦痛さえも楽しむ。そのような覚悟で、新しい世界へと不断のチャレンジを続けることが、比類のないサービスを生む源泉となっているのです。


(世界最高峰ホテリエ、ホルスト・シュルツ直伝「サービス上級者へのレッスン」第7回、PRESIDENT Online スペシャル 2014年5月28日(水))

 


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