孫さんの話し方で特徴的なのは、ソフトバンク執行役員 青野史寛氏や同取締役常務 藤原和彦氏に対して使った「ビジョンコミュニケーション」と呼ばれる手法です。これは最近のビジネスシーンで、特にリーダー論の文脈でよく紹介されます。「ビジョンは抱いているだけでは伝わらない。部下や周囲に、口に出して伝えてはじめて意味を持つ」という考え方です。かつて「豆腐を一丁、二丁と数えるように、1兆、2兆の会社にする」と公言したのは、まさにそれでしょう。
ポジティブなことを口に出すのは大切なことです。「内言語法」は、こうした自己暗示のひとつです。

また孫さんが、「過去ではなく未来を重視して会社の完成形を磨け」とソフトバンク取締役常務 藤原和彦氏に伝えたやり方は、「目標設定理論」に引きつけて説明することができます。

実験によれば、被験者に「思い切り高く跳んでください」と指示した場合、何もない状態よりも、バーを置いた状態のほうが、高く跳べるのです。このとき跳躍力はバーの高さが高いほど伸びます。つまり、少し無理な目標を設定したほうがよい結果が出せるのです。

人間には都合の悪い情報を無視しようとする「選択的接触」という心理傾向があります。ビジネスの場でも、経験の豊富な人ほど大胆な決断ができません。孫さんは広告業界について無知だったこともあり、「選択的接触」にとらわれず、革新的な一手が打てました。

栄誉が第三者にも公表されることで、褒められた人の嬉しさは倍増します。日本人は評価をこっそり伝えることが美徳と考えがちですが、その一方で皆から認められたいという気持ちは誰しも持っているものです。

(内藤誼人、心理学者、孫正義流トーク「相手を本気にさせる」8つのキーワード、PRESIDENT 2014年8月4日号)

 




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