「コミュニケーション」とは本来、お互いの「共通認識」をつくることが目的だと言われています。
コミュニケーションにおける会話の中の言葉などから得られるいくつかの「情報」を自分の中の過去の経験や知識と照らし合わせ、共通の認識をつくることで、お互いの頭の中のイメージや背景をつなげています。

人と人とのコミュニケーションに「もっとも必要な情報」、それは「感情の情報」です。
やりとりする相手が、その時、どのような感情であるかによって、言葉の意味や目的、求められる対応などはまったく異なってきます。

インターネットが日常化する前までは、仕事における会社などでのコミュニケーションは、対面して直接話すか、もしくは電話するというのがほとんどでした。そして、相手の表情や口調などから、その感情を敏感に感じとっていました。

友達や家族との日常的なやりとりでメールやメッセンジャーに顔文字やスタンプを多用するというのは、コミュニケーションの性質を考えたら当然のことです。それはもはや、一種の「おもんばかり」だとすらもいえます。

仕事のビジネスメールにおいても、「感情の情報」を正確に伝え合うことが非常に大切なことだと思っています。単なる事実の報告や共有だけなら、テキストだけでもかまいません。しかし、日常的なビジネスメールでのやり取りにおいては、会社のチームメンバーやお客さんに対して、複雑なお願いをしたり、交渉をしたり、時には厳しい指示を出さなければならないようなことがたくさんあるわけです。そんなとき、メッセージの発信者が怒っているのか、ちょっと申し訳なさそうにしているのか、強気でいるのか、それとも弱気なのかといった感情のステータスは、とても重要な情報になります。

感情の情報が正確に共有できていなければ、指示や相談、交渉事はちょっとしたことでトラブルの原因にもつながってしまいます。それくらい、僕たちは複雑な感情の渦の中で人間生活を送っているのです。だからこそ、お互いの感情の状態を正しく共有することは、コミュニケーションを心地よく行うためにも、そしてその目的をちゃんと果たすためにもとても大切なことなのです。

そもそも、ビジネスメールの目的は、日本語を正しく使うことなんかではありません。仕事におけるさまざまなものごとを正しく伝え、共有することです。とにかく生産性が重視される今日の仕事社会だからこそ、デジタルのツールを賢く上手に使えばいいのだと思います。

(若新雄純、PRESIDENT Online 2016.11.1)

 

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