同業態ライバルの業績が伸び悩んでいる中、同社はどうして独り勝ちしているのだろうか。

業界関係者に話を聞いてゆくと、勝利の方程式やビジネスモデルの裏に、それらを生かす現場の地道な改善の積み重ね、すなわち論理的でわかりやすい近年の「計画経営」花盛りの下でなおざりにされがちな泥臭い「現場力」を、同社は磨いてきたことがうかがえる。

こうした現場力は、どのようにして磨かれたのだろうか。


同社には『過度に指導しない』人材育成土壌がある。平たく言えば『自分で売り方を考え、自分のやり方で売れ』。だから同社にはチェーン業種に付き物の接客マニュアルがない」

接客マニュアルを作ると、それが縛りになって、マニュアル以上の接客ができなくなってしまう。「マニュアルにないことは店長に聞く」といった具合に、指示待ち人間になる。
つまり、自分が考えた接客で靴が売れるとうれしい。だからもっと売れるように工夫する。そこに仕事のハリが生まれ、売るのが楽しくなってくる。

「接客では来客のニーズ把握が最重要。世間話のような対話をし、試し履きをしてもらっている間に、この客はその価格帯の靴が欲しいのか、そのブランドが好きなのか、その色が気に入ったのかなど聞き出すのではなく感じる。すなわち察知しないといけない。察知しないと、試し履きした靴が気に入らない場合、さっと気に入りそうな次の靴を提案できない。提案できないと客はそのまま帰ってしまう」
社長は、接客プロのような口上手店員よりも「口下手でも小さな改善をこつこつと愚直にやっている店員が当社では伸びている」とも述べている。

成熟・激戦の市場で同社が成長し続けているのは、接客の重視、店員の豊富な商品知識、店員の自主性を尊重する社風などによる現場力以外の何物でもない。その現場は飽くなき顧客志向であり、貪欲なまでの販売志向でもある。

 同社では週末になると、役員も本社管理部門の社員も揃って店頭に立つ。野口社長が店員に混じり率先して靴を売っているのは有名な話。これも市場のニーズを肌で感じるのが目的だという。


(ABCマート、ビジネスジャーナル 2015年2月26日

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