「山中教授のルーツの1つに、高校時代の恩師に『スーパーマンになれ』と指導されたという経験があるそうです。まだ無名の若手だった時代、留学した米国のグラッドストーン研究所で、ほかの研究者が1つの実験を行っている間に、山中教授は3つの実験を完璧に同時進行させて驚かせた。尋常ではない集中力で効率を追求することで、まさにスーパーマンのような仕事を達成してしまうんですよ」

大物科学者にはわりとエゴイストが多いんです。浮世離れした無邪気な天才や、派閥好きな政治家といった古典的な象牙の塔の住人には、業績を自分1人の手柄にしたがる人もいます。山中教授はそういった人たちと全く違う、非常に紳士的な新しいタイプの研究者」


米国のグラッドストーン研究所に留学していた頃、山中教授はボス所長から印象深い言葉を贈られたという。
研究者として成功する秘訣はVWだ。VWさえ実行すれば、君たちは必ず成功する

VWとは、「Vision(長期的目標)」と、「Work hard(ハードワーク)」のことを指す。ただ勤勉なだけでは足りず、常に大きな目標を見据えて努力を続けることが大切という教えだ。

徹底的に効率を重視する山中教授の仕事術は、タイムマネジメントという観点から見てもユニークだ。自宅のある大阪から京都への通勤は電車を使い、移動時間をメールの読み書きや英語の勉強にあてる。メディアの取材対応は日程をあらかじめ宣言し、その期間以外は受け付けないことでも知られる。納期を厳守する工場的な発想ともいえるが、いずれも多忙な日々のなかでわずかでも研究時間を捻出するための工夫だ。それと同時に趣味のマラソンも継続しており、毎日昼休みに30分間ジョギングする習慣は欠かさない。

「よく『重要なアイデアは散歩中に思いつく』という話がありますが、体を動かしているときは頭がよく働くし、教授自身も毎日ジョギングをすることの効能を語っています。ただ、教授に関しては走るからアイデアが出てくるというより、走っているときですら常に頭では仕事のことを考え続けているというべきでしょうね」


(山中伸弥、ノーベル医学・生理学賞受賞者、PRESIDENT 2013年2月4日号




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